失明や腎症、さらに心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞につながる動脈硬化など、自覚症状がないまま、こうした怖い合併症を引き起こす糖尿病。日本糖尿病学会2004年が東京都内で開かれるのを前に、予防・治療の基礎知識、国をあげての対策の必要性などについて、専門の医師三氏に話し合ってもらった。


◇東大大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科教授 門脇孝(かどわきたかし)さん

1978年東大医学部卒。東大医学部助教授などを経て、2003年から現職。日本糖尿病学会理事。第44回日本糖尿病協会総会実行委員長。


◇自治医大名誉教授 葛谷健(くずやたけし)さん

1955年東大医学部卒。1972年から1997年まで自治医大教授。2000年から藍野加齢医学研究所糖尿病センター長(大阪府茨木市)。


◇東京女子医大教授(糖尿病センター所長)岩本安彦(いわもとやすひこ)さん

1971年東大医学部卒。東京女子医大助教授などを経て現職。日本糖尿病学会理事。第47回日本糖尿病学会会長。



◆重み増す患者への啓発

岩本:
糖尿病が21世紀の国民病とまで言われるほどに増えているのを見ると、学会が官・産と協力し、本格的な対策を講じる必要があると思うのですが。


葛谷:
糖尿病の1番の問題は、自覚症状がないことです。自覚症状のないまま、10年くらい高血糖の状態が続くと、いろいろな合併症が出てきます。しかし、早期からきちんと定期的に検査をし、医師の管理・治療を受ければ、合併症を起こしにくくなりますし、症状が出ても軽く済みます。


門脇:
国家的な対策を立てることも急務では。その中で、次の3つが大切だと私は考えています。

まず研究・開発。患者さんに負担の少ない治療や効率的な予防のために、糖尿病の原因を究明し画期的な治療法を開発することが必要です。それに対し、国として予算を投じていただきたい。

次に患者さんに対する啓発活動。生活習慣の見直しや適切な治療によって、病状を大きく改善できることを知ってもらい、合併症を起こさないため早期に適切な管理を受けてもらうようにする活動が欠かせません。

最後に対糖尿病の組織づくりです。学会を中心に、行政、医療関係者、患者団体、またマスコミも含めて、啓発活動や教育、研究を推進する大きな運動体を築いていく必要があると考えています。


岩本:
がん対策と同じように、糖尿病対策についても国家的に考える時代になってきているようですね。



戸川利郎


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