大畑亮介

糖尿病について。日本糖尿病学会年次学術集会の糖尿病啓発プログラムとは。糖尿病の多くは、ほとんど自覚症状を現さない厄介な病気です。ひどくなったときに初めて「のどが異常に渇く」「多尿になった」「極度にやせる」などの症状を訴え、さまざまな合併症を引き起こします。~リトリート編集部(大畑亮介)

糖尿病の改善・予防策

大麦

最近、大麦の健康効果が次々と解明されており、注目を浴びていますが、それよりずっと以前、明治のころ、海軍の軍医であった高木兼寛(たかき かねひろ)が大麦に着目していました。

というのも、軍隊では、脚気(ビタミンB1欠乏症の一種で、心不全と末梢神経障害を起こす)という病気が流行し、軍隊としての機能が損なわれるほど重大な問題になっていたからです。

高木医師は、脚気の原因を白米主体によるビタミンB不足と考え、白米から大麦入りごはんに変える食事療法を行います。

結果は大成功で、脚気患者は急激に減りました。

この高木医師は、東京慈恵会医科大学病院(慈恵医大病院)の創設者です。

大麦は、ビタミンB群やミネラル類を多く含む栄養豊富な食材です。

成分の中でも特筆すべきなのが、食物繊維の多さです。

その量は、玄米の4~5倍。

白米との比較では10~20倍もの差となります。

すごいのは量だけではありません。

食物繊維には、水に溶けにくい不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維がありますが、大麦にはその両方が豊富に含まれています。

この2種類の食物繊維の理想的なバランスは「不溶性2に対して、水溶性が1」です。

しかし、水溶性食物繊維を豊富に含む食品が少ないため、ほとんどの人の場合、水溶性食物繊維が不足しているのです。

大麦は、水溶性植物繊維が豊富という珍しい食品です。

そのため、大麦を食事に加えると、食物繊維の理想的なバランスに近づけることができるわけです。

関連記事

糖尿病 自覚症状少ない「国民病」 合併症の予防を

2010年11月25日

糖尿病の多くは、ほとんど自覚症状を現さない厄介な病気だ。ひどくなると、初めて「のどが異常に渇く」「多尿になった」「極度にやせる」などの症状を訴え、さまざまな合併症を引き起こす。そうなると、日常での生活の質(QOL)を著しく損なうだけでなく、時には生命の危険にさらされる。生き生きとした健康的な生活を送るには、早期発見と適切な治療開始でいかに合併症を予防するかにかかっている。11月14日が世界糖尿病デーだったのを機に、糖尿病の現状を探った。

診断基準改定

HbA1c値を追加

糖尿病の診断基準が2010年7月から正式に変わった。日本糖尿病学会による改定は11年ぶりのことだ。改定によりヘモグロビンとブドウ糖が結び付いたヘモグロビンA1c(HbA1c)値を診断基準に追加、早期に確定診断できるようにした。これで適切な治療の促進と合併症予防に効果が表れるのではないかと関係者の期待を集めている。

早期確定が可能に

従来は(1)朝食前の空腹時血糖値(2)ブドウ糖の負荷試験(3)随時血糖値-について検査。これらの検査結果が診断基準に触れても、典型的な症状が見られない限り、1日の検査では「糖尿病型」にとどめていた。別の日の再検査で同じように糖尿病型と認められた場合に糖尿病と初めて診断された。これまではHbA1c値は参考にされてきたが、今回の改定によって、日本の測定方式で「HbA1c 6・1%以上」(国際標準値6・5%以上)であれば、従来の血糖値検査と併せ、両方が基準値を超えた場合には1日の検査だけでも糖尿病と診断できるようになった。

HbA1c検査

HbA1c検査は、過去1、2カ月の平均的な血糖状態を示す指標で糖尿病治療の評価を見る上では重要な要素だ。1日の検査だけで診断できれば、対策も取りやすい。糖尿病の可能性があると、医師は診断基準に基づいて正確に判断、「食事」や「運動」「薬物」を基本に本格的な治療に移りやすくなった。

リスク高い日本人

失明や腎不全の恐れ

高齢社会の進行や食生活の欧米化に伴い、糖尿病が増え、国民病の様相を呈している。厚生労働省の国民健康・栄養調査では、2007年時点で糖尿病が強く疑われる人は890万人に達する。その可能性がある予備軍1320万人を含めると合計2200万人に上り、単純計算で国民5人に1人の勘定。加齢とともにその割合は増えているだけに、事態は深刻だ。

大きな要因

朝日生命成人病研究所(東京都千代田区)の赤沼安夫名誉所長は「カロリーオーバーによる肥満、運動不足が大きな要因。これらの生活習慣に遺伝因子が加わると、発症のリスクはさらに高まる。日本人は糖尿病になりやすいというデータもある」と説明する。

2型糖尿病

糖尿病患者のうち90%以上が、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリン量が低下するか、分泌されてもその作用が十分に働かない「2型糖尿病」という。このため、血液中のブドウ糖をエネルギー源としてうまく細胞に取り込めず、慢性の高血糖状態が続き特有の症状を現すのが糖尿病だ。

糖尿病の怖さ

糖尿病の怖さは全身に及ぶ合併症にある。三大合併症の1つ、糖尿病網膜症は進行すると、網膜の細小血管がもろくなって出血し失明も。年間約4000人が失明し、成人の失明原因2位と高い。

糖尿病腎症が透析導入原因のトップ

糖尿病腎症が原因で腎不全に陥り、新たに人工透析治療を受ける患者は現在、年間1万6000人以上に達し、原因別ではここ数年透析導入原因のトップにある。人工透析は週3回ほどの透析が必要で患者は時間的にも大きな負担を強いられる。

糖尿病神経障害

自律神経の異常で起こる糖尿病神経障害は、足先がしびれるなどの特徴がある。傷が原因で壊疽(えそ)となり、足を切断せざるを得ないケースもある。

血圧をコントロールすることが重要

糖尿病は細小血管ばかりでなく、太い動脈にも影響し命を落とすことになりかねない。動脈硬化を早め、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞を発症させる要因になるためだ。赤沼名誉所長は「血中の脂肪やコレステロール値を抑え、血圧をコントロールすることがより重要」と話す。

歯周病とも関連(中津孝吉)

最近は糖尿病が歯科の領域でも注目を集めている。歯を失う1番の原因となる歯周病の罹患(りかん)率が、糖尿病患者はそうでない人に比べて2倍以上高く、重症化しやすいというのだ。さらに歯周病は糖尿病を悪化させるという報告もあるという。(中津孝吉)

多様化する治療法

血糖値に応じ作用する薬も

血糖値が高いときはインスリンの分泌を促進させるが、血糖値が低くなるとほとんど作用しない-。従来とはまったく違ったタイプの糖尿病治療薬であるインクレチン関連薬「DPP-4阻害剤」が相次いで登場。治療が新たな段階を迎えている。

DPP-4阻害剤の特徴

DPP-4阻害剤の大きな特徴は、インクレチンという患者自身のホルモンを活用してインスリンの分泌を促す点にある。しかも、低血糖発症のリスクが抑えられ、日本人に多い2型糖尿病患者の治療に効果を挙げているという。

インクレチン

インクレチンは腸管から分泌され、その1種であるGLP-1は血糖値が上昇すると、膵臓の細胞に作用して血糖値を下げるように働く。血糖値が低い状況では作用しない。

インクレチン関連薬

インクレチン関連薬は2009年末に「シタグリプチン」(商品名ジャヌビア)として初めてお目見え。製薬各社が追随した格好で関連薬を相次いで発売、2010年6月には注射剤の「GLP-1受容体作動薬」も登場した。

作用する仕組み

血液中に分泌されたGLP-1は「DPP-4」という酵素によって瞬く間に分解され、その効果を失ってしまう。DPP-4阻害剤はDPP-4の活性をブロックして、GLP-1そのものの働きを持続させる。GLP-1受容体作動薬はGLP-1を補って血糖値が下がるように作用する仕組みだという。

その他糖尿病治療薬

このほか糖尿病の治療薬には(1)インスリン製剤(2)インスリン分泌促進薬(3)インスリン抵抗性改善薬(4)食後高血糖改善薬-などがある。

副作用少なく効果大

糖尿病治療薬のインクレチン関連薬「DPP-4阻害剤」が初めて登場してから間もなく1年。

岐阜大大学院医学系研究科の武田純教授(内分泌代謝病態学)は「血糖値の上がり下がりの幅が小さくなり、大きな治療効果を挙げている。治療方法に選択肢が増え、一人一人の病状に合った多様な治療ができるようになった」と説明する。

治療方法

糖尿病患者にとって食事の管理徹底と運動療法は欠かせない。それでも血糖値が目標値に収まらない場合には薬物療法が加わる。

80%近くが改善

武田教授によると、従来の薬では効き目が少なかった患者にDPP-4阻害剤を投与したところ、80%近くが改善に向かった。中には服用後1カ月でヘモグロビンA1cの顕著な低下が確認できた患者もいた。

副作用をどう抑えるかが課題

糖尿病の治療では、血糖値の下がり過ぎや体重増加の副作用をどう抑えるかが課題。DPP-4阻害剤の場合、そのような副作用はほとんど現れず、軽い便秘や下痢を訴える程度だったという。

長期処方も可能に

武田教授は「特に従来の薬では血糖値のコントロールが難しかった患者に、はっきりとした効果を挙げている点は意義深い。発売以来1年が経過して2011年1月からは長期処方も可能になり使いやすくなる」と話している。

11月14日 世界糖尿病デー 2017年11月13~19日 全国糖尿病週間

2017年11月14日、岐阜新聞

糖尿病への理解深めよう

年々増え続ける糖尿病。岐阜市の調査では、40歳以上の3人に1人が糖尿病患者ならびに予備軍といわれ、がん、脳卒中、心臓病の3大生活習慣病の“黒幕”とされている。糖尿病への意識を高めようと、国連は2006年、11月14日を「世界糖尿病デー」と定めた。2017年は2017年11月13日から全国糖尿病週間(19日まで)が始まり、「身近な病気『糖尿病』を皆で一緒に考えよう」をテーマに、県内各地でブルーライトアップや、世界糖尿病デーを記念したセミナー、イベントなどが開かれている。今回は「糖尿病」について正しく理解し、病気にならないようにするために、基礎知識や予防のポイントなどについてまとめた。

強く疑われる成人 初の1000万人に

厚生労働省の2016年の「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病が強く疑われる成人が、高齢化の進展などにより、推計で初めて1000万人に上ることが分かった。糖尿病や可能性を否定できない「予備軍」の推計はやや減少したものの、依然として約2000万人に上っている。

「予備軍」でも危険

糖尿病は、血液中に含まれるブドウ糖が多くなる病気。すい臓から分泌されるインスリンというホルモンが、血液中のブドウ糖を一定に保つようにコントロールしているが、インスリンの作用が不足し、高血糖の状態が続くと、身体の働きが正常に保てなくなる。慢性的になると、網膜症や神経症など細い血管障害の合併症を発症し、失明や血液透析、足の壊疽(えそ)による切断などの要因となる。

太い血管障害

特に、太い血管障害の場合は重篤である。動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞は糖尿病患者の死因の第1位と、リスクは予備軍の段階から上昇する。肥満人口も急増しており、内臓脂肪の過剰な蓄積は、脳梗塞や心筋梗塞に影響するため、中性脂肪やコレステロール、血圧、血糖の数値が高いと、危険をもたらすことになる。

『自分には起こらないからまだ大丈夫』と考えている人が多い

岐阜大大学院医学系研究科内分泌代謝病態学の武田純教授は「糖尿病は自覚症状がないため、『自分には起こらないからまだ大丈夫』と考えている人が多い」と指摘する。「糖尿病予備軍の段階から心筋梗塞や脳梗塞の発症も十分起こりうるため、『正常』以上『病気』未満の段階から気をつけることが大切」と助言する。

認知症のリスクも

糖尿病は、年々著しく進んでいる高齢化の影響も指摘されている。高齢になると、心臓機能などが低下したり、血管障害がみられたりして、合併症や心筋梗塞、脳梗塞が発症しやすくなる。高血糖による認知症リスクも高いとされている。年齢とともに基礎代謝は低下し、骨粗しょう症などに見られるように骨が弱くなる。筋力も落ち、運動量も減ると血糖値は上がっていくという悪循環に陥る。平均寿命と健康寿命との間に10年ほどのギャップが生じる背景となっている。

原因は生活習慣に

糖尿病になる原因の多くは生活習慣にあるとされている。食の欧米化が進み、動物性脂肪のある揚げ物や炒め物など高カロリーな食事が増え、偏食傾向の若者も多い。その結果、食のバランスは崩れ、運動不足も重なり、肥満になるケースが増えている。予防の取り掛かりとしては、食生活の改善と簡単な運動などが挙げられる。

和食を推奨

食生活について、武田教授は、ユネスコの世界無形文化遺産に登録された和食を推奨する。「日本では旬の食材を手間ひまかけて調理してきた。京料理などは時間をかけてしっかりとだしを取るため、塩やしょうゆなども少量で塩分の摂取量は意外と少ない」とし「旬の時期に取る野菜は、他の季節で収穫される時期と比べて栄養価が高いことも分かっている。みそや納豆、漬物などの発酵食品は腸内細菌を整える働きがあり、和食はまさに健康食」と強調する。

注意すべきことは

近年、米などの炭水化物の摂取を抑える低炭水化物ダイエットが普及しているが、注意が必要なのは、食のバランスと正しい理解。人間に必要な炭水化物は糖質と食物繊維から成るが、現代の食生活では、食物繊維の摂取が不足している。「ゴボウやレンコンなどの根菜類をはじめ、ひじきなどの海藻類や最近話題のもち麦飯などを食事に盛り込むだけで、しっかり食物繊維を取ることができる」とアドバイス。

日頃から意識する

同時に、「糖質制限と切り離して考えることが大切」と指摘。特に見逃しがちなのが、清涼飲料水や炭酸飲料などに含まれるブドウ糖果糖液や果物に含まれる果糖。「単糖類なため、糖分が吸収されやすく、脂肪肝や動脈硬化のもとになる」という。正しい知識を持ち、必要な栄養素を摂取しながら、糖質を抑え、日頃から意識することが健康な体づくりにつながっていく。

ウオーキングを推奨

食生活の改善に加え、「体を動かして基礎代謝を上げることが大切」とし、身近な取り組みとしてウオーキングを推奨。「足腰にもよく、認知症予防にもなる。仲間の輪も広がり、若返って老化防止にもなる」と助言する。

【糖尿病が疑われる人】
  • 血糖が高いといわれたことがある人
  • 運動不足
  • 外食が多い
  • 肥満気味(BMI25以上)
  • 高血圧(140/90以上)
  • 腹回りが85センチ以上ある人
  • 40歳以上
  • 妊娠した時に尿から糖が出たといわれたことがある人
  • 親やきょうだいなど血縁に糖尿病のいる人
  • 血糖が高いといわれたことがある人

健康診断おろそかにしないで

岐阜大大学院医学系研究科内分泌代謝病態学 武田純教授

自分の体の状況をいち早く知るために、健康診断をおろそかにしないことが重要だ。メタボ健診や特定検診の受診率は低く、5割程度にとどまっているが、年に1度、職場検診、住民検診などを必ず受けることが第1歩。

HbA1cの数値

健康診断などの血液検査で注目したいのは、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)の数値。血液中で、酸素を運搬する赤血球のタンパクとブドウ糖が結合したもので、血液内にブドウ糖が多ければ多いほど、HbA1cの値は高くなる。赤血球の寿命は約4カ月のため、HbA1cの数値は、過去1~2カ月の血糖値の平均値として見ることができる。正常値は4・3~5・8とされ、6・5以上の場合、糖尿病が強く疑われる。また、6・0から糖尿病や予備軍の可能性があるので、早い段階での専門検査が必要。

治療を続けていくことが大切

その上で、糖尿病と診断されたら放置しないこと。健診などで再検査と診断された場合、最初の受診は高いものの、その後の継続率は4割程度まで落ち込む。「症状が出ていないから大丈夫」と思わず、治療を続けていくことが大切だ。

糖尿病の合併症

一方、糖尿病の合併症は、3大合併症(網膜症、腎症、神経症)をはじめ、心筋梗塞、脳梗塞などがあるが、近年、がんや歯周病が糖尿病と密接な関係があることも明らかになっている。特に歯周病は第6の合併症ともいわれている。歯周病の治療によって血糖コントロールの状態は改善することが分かっているので、まずはよくかむこと。そうすると、唾液もよく出るようになり、歯茎も強くなる。食事に含まれる食物繊維は歯周病予防にも有効とされている。ぜひ、この機会に歯の健康管理にも気をつけてほしい。

武田純教授

たけだ・じゅん 京都大大学院医学研究科博士課程(内科学専攻)修了。医学博士。シカゴ大医学部、群馬大生体調節研究所などを経て、2003年、岐阜大医学部教授。2004年から現職。岐阜県糖尿病対策推進協議会副会長、日本糖尿病学会(専門医、指導医)、日本糖尿病協会(理事、療養指導医)ほか。

日本糖尿病学会 市民公開講座特集 糖尿病・予防と正しい療養生活(5/7) 危ぐされる患者急増 予防と自己管理カギ

座長 自治医科大学参与・金澤康徳氏 藤山台クリニック理事・古田雄彦氏

2000年6月20、東京新聞

「予防と療養のこつ」をテーマにしたシンポジウムは、金澤康徳・自治医科大学参与(日本糖尿病学会理事)、古田雄彦・藤山台クリニック理事の両氏を座長に、東海、北陸地域の代表的研究者と厚生省担当者が一次予防から、合併症防止、運動・食事療法、治療薬の現状など幅広い分野から糖尿病にスポットをあてた。

糖尿病-なぜ生活習慣病なのか 個人の選択で防げる

厚生省保健医療局生活習慣病対策室室長補佐 大内章嗣氏

早期発見して早期治療する二次予防に加えて、病気自体を未然に防ぐ一次予防が重要になってきています。厚生省が策定した2010年までの長期的な健康づくり計画「健康日本21」は、より一次予防に重点を置き病気自体を防ぐことによって、健康に生活できる期間を延ばし、結果として生活の質の向上を図っていくことを基本理念にしています。

食事、運動、喫煙、飲酒

食事、運動、喫煙、飲酒という生活習慣は、糖尿病発症や進行に関連していて、生活習慣を変えていくことによって、病気そのものを減らすことができます。4年前にそれまでの「成人病」から「生活習慣病」に名称変更したのは、そのことをみなさんに理解していただきたかったからです。

健康日本21

健康日本21では、1日の歩数を今より1000歩増やすなど具体的目標を掲げています。生活習慣を変えることは個人の選択の問題です。家庭、職場、地域、学校などの協力が欠かせません。ぜひみなさんの積極的な取り組みをお願いします。

薬物療法-ここまで進んだ 効果や服用法理解を

三重大学医学部第三内科講師 住田安弘氏

平成に入って糖尿病治療の新薬が次々に登場、患者の状態に応じたきめ細かな治療が可能になりました。現在治療に使われている薬は次のようなものです。

以前からあるスルホニル尿素剤は膵臓(すいぞう)のインスリン分泌を促進します。太っていない2型糖尿病に効果があります。アルファグルコシターゼ阻害剤は小腸でのブドウ糖吸収を遅らせて、食後の急激な血糖値上昇を抑えます。1型でインスリンを打っている人も併用することができます。ビグアナイド剤はインスリン抵抗性を改善、インスリンが効率よく働くようにします。チアゾリン誘導体もインスリン抵抗性の強い肥満の方によく効きます。インスリン製剤も非常に進んできました。

二次無効

しかし、薬によっては使っているうちに効かなくなる二次無効という現象や副作用があります。なぜ服用しなくてはいけないのか、その作用メカニズムや副作用は何かを患者さん自身が理解してください。

運動療法-だれでもできる 長く続けるのが肝心

名古屋大学総合保健体育科学センター教授 佐藤祐造氏

運動するとどうしていいか。食事療法と運動療法をきちっと守った患者さんがいます。6週間ほどで、7・8キロ体重が減って、インスリン(作用)の力が回復しました。一方食事制限だけで4・2キロやせた患者は回復しませんでした。肥満してきたからやせようと食事だけで減量しても、あまり効果はないのです。

インスリンの力が回復

自分は太ってないから関係ないという人もいるでしょう。学生さんの協力を得て週5日、1年間走ってもらいました。非常に軽い運動で、食事も制限しなかったので体重は変わりませんでしたが、インスリンの力が明らかに回復しました。インスリンの力が回復するのは糖尿病、肥満だけでなく、高血圧、高脂血症、動脈硬化にもいい効果があることが分かっています。

ライフスタイルに合ったやり方

強い運動では脂肪は燃えませんが、散歩、ジョギングなど息を吸ったり吐いたりする有酸素運動は糖質とともに脂肪も燃やします。1回の持続時間は10分から30分。短くてもかまいません。週3日以上しなければいけません。自分のライフスタイルに合ったやり方をものにしてください。

食事療法-明日からできる 家族も共に日本食を

金沢大学医学部付属病院総合診療部教授 小泉順二氏

食事療法は適切なエネルギー量、バランスの良い栄養素そして規則的な食事習慣が重要です。

1日に必要なエネルギー量は、標準体重(身長の2乗×22)に活動量に応じたエネルギーを掛けてはじき出します。あまり体を動かさない太りぎみの人でしたら体重1キロ当たり25キロカロリーが目安といわれます。栄養バランスのいい食事は血糖値を抑えるだけではありません。コレステロールの多いものを減らす、動物性の脂を減らすことで動脈硬化、食塩を減らすことで血圧にもいい効果が期待できます。肥満はどこかで食事のスタイルが悪いということです。いわゆる日本食、米を食べてください。野菜、果物、牛乳、乳製品、豆、魚、体にいいものを組み合わせていただきたい。

健康な生活を送るための基本

食事療法、血糖・体重コントロールは健康な生活を送るための基本です。糖尿病食は患者だけでなく、一般の人も見習うべきなのです。家族みな、社会全体でやるべきことです。

糖尿病と合併症-防ぐには 厳格にコントロール

名古屋大学第三内科助教授 中村二郎氏

糖尿病性合併症に特徴的なのは細かい血管が侵される細小血管症、太い血管が侵される大血管症の2つです。網膜症は後天的な失明の原因としては第1位。慢性の腎(じん)不全も血液透析原因の第1位になりました。神経障害は壊疽(えそ)という状態になることで恐れられています。脳血管障害、動脈硬化症は糖尿病でない患者さんに比べて、一般的に10年以上も進行が早い、といわれています。

合併症を防ぐには

血糖値のコントロールを良くすると、合併症は防げるのか。イギリスで、今まで通りの治療法とより厳格な治療法を施し、10年、20年にわたって検討しました。従来の治療を続けていた場合、ヘモグロビンA1cが平均7・9%に対し、強化療法では7%。わずか0・9%ですが、細小血管障害30%以上、死亡率で25%減るという大きな差が出ました。

合併症を防ぐには早く治療し、治療を継続していくと同時に、血圧、脂肪分といったものを含めた厳格なコントロールが重要です。