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埼玉県のさいたま地裁越谷支部(2008年3月)

報道によると、仮処分の対象になったのは、春日部市在住の60歳代の男性とその妻だった。この夫婦の母親(90代)は、2006年3月に春日部市立病院に患者として入院した。

数日後から、60代の息子とその妻が病状についての質問や要望を長時間にわたり繰り返すようになった。2008年1月ごろからは、「患者にわざとやけどをさせた」「虐待している」などと主張した。医師や看護師らを詰問したり、怒鳴ったりした。ナースセンターや病室で大声を上げるようになった。

多いときは1日に5~6回、質問を繰り返したという。他の患者たちから「怖い」などの苦情が出た。

診療関係の調整調停に欠席

春日部市は2007年5月、越谷簡裁に診療関係の調整調停を申し立てた。しかし、2人は調停を欠席した。このため、春日部市は2008年2月、さいたま地裁越谷支部に、医療妨害の禁止を求める仮処分命令を申し立てた。

2008年3月25日のさいたま地裁越谷支部の決定(命令)では、家族に対し、以下の行為によって診療行為を妨害してはならないとした。

  • ・医師や看護師などに大声を出して怖がらせる
  • ・「患者を虐待し、必要な治療を怠っている」などと誹謗中傷する
  • ・病院に対する信頼を損なわせる

井上清成・顧問弁護士

仮処分決定を受けて、春日部市立病院の井上清成顧問弁護士は「逸脱した苦情でダメージを受ける病院を守る手だてが出来た」とコメントした。病院から患者関係者に対して診療妨害禁止を求める仮処分が認められたのは全国でも珍しいという。

春日部市立病院の小谷昭夫院長は「医療を提供する側は当然だが、医療を受ける人も社会通念上のルールを尊重していただきたい」との談話を出した。